大人からのバレエ推進委員会監修

中村みちえコラム

中村みちえ

翻訳家

バレエ愛好家

著書「ニューヨーク ジョフリー・バレエスクール 大人からのバレエ」

 第11回『こたつで真夏の夜の夢』

チャイコフスキーではなく、
メンデルスゾーン

今年は夏から一気に冬になったようですが、ちまたではくるみの公演日程もちらほら目にするようになりました。 もうそんな季節なんですね。でも今わたしの頭のなかで流れているのはチャイコフスキーではなく、メンデルスゾーン。それもエンドレス状態で。またも深くはまってしまいました。 今度はアンソニー・ダウエルの「真夏」に。

我知らず涙がこみ上げて

世のなかいい時代になったもので、全幕観ることができます。アンソニー・ダウエル、美しいです。 背後に登場しただけで存在感があります。顔つき、足の出し方、手の出し方、いずれもそれ自体が芸術品です。 観ているだけで、バレエを始める前には反応しなかった心のどこかがぶわーっと熱くなって、我知らず涙がこみ上げてきます。 真夏といえば、妖精の王さま女王さまよりもっと興味を引かれるのが、いたずら者のパック。 なぜか小柄で敏捷なイメージがありましたが、まさにそのとおりというか、それ以上の存在でした。 しかししかし、さらに興味津々だったのが、ロバに変身させられる職人のボトム。彼の道化ぶりがバレエではどう表現されるのでしょう。

英国におけるキャラクターダンサーの重要性

冒頭の木陰から顔をのぞかせた瞬間、大当たり〜という感じでした。原作の滑稽な劇中劇をバレエにしたらまさしくこんなイメージなんだろうなあと感動しました。 しかも仲間うちでいちばん間抜けづらとされる彼が、かぶりものをしたうえにポワントで踊ったりするところがまたかっこいい。 カーテンコールでもパックと同等の扱いを受け、英国におけるキャラクターダンサーの重要性を思い知らされました。

ユーモア精神の違いを
垣間見る思い

「真夏」はこのアシュトン版のほかにバランシン版もあるようです。 「物語?けっ!」って感じのバランシンがなぜシェイクスピアなのか不思議な感じもしましたが、匂い立つような英国趣味あふれるアシュトン版とはまた違う持ち味があり、両者を見比べてみるのもおもしろいです。 そうそう、同じアシュトン版にアメリカンバレエシアターのものもあるようです。こちらはまたぐっとアメリカンな感じ。ボトムの描写における日英両国のユーモア精神の違いを垣間見る思いがします。

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